Craftsman Interview #2

お客様が望んでいる“以上”のものを

永田みどり

お客様に喜んでもらうことが原動力

─────永田さんの品は作る手間から考えると、価格設定が安すぎるのではないかと思うこともあります。

焼きものは手間がかかってるから高い、というものではないと先輩から教わりました。熟練すればそれだけ手が早くなるわけだし。価格設定はいつも難しいですね。
私はいいものを作ったという達成感が欲しい、そして、お客様には「これがこの値段で買えるの?!」というお得感を感じてほしいんです。値段が高いことで買うことを諦められちゃうのが一番寂しいので、自分と同じくらいの金銭感覚の人がこれにどれだけのお金を出せるか、ということを考えます。
「どれだけお金をはたいても欲しい」とお客様に思わせるものを作るという方向もあるけれど、私が作っているのは“美術品”ではないな、と思っているので。
毎日の暮らしの中にとけ込んで、それがあることで気持ちが潤うもの、豊かになるものを作りたい。だから干支の置物にしても、その年一年十分に楽しんでもらったら、次の干支が巡ってきた時にはまた新しいものを買いたい、と思ってもらいたいし、そう思わせるだけのより良いものを作っていきたいですね。

─────永田さんの品は一個一個の出来が揃っているのもネットショップにとってはありがたいです。
お客様に送るときに「これはいいけど、こっちはちょっと…」と思いながら出荷するのは心苦しくて。そういう点でも永田さんの品は安心して扱えるので助かっています。

それはたぶん一個一個の出来が同じというよりは印象が同じ、ということなんじゃないかな。持っている雰囲気が同じなんだと思います。
あとは型紙を作ったり、重さを測って揃えて作っています。
ただ、やっぱり失敗することもあります。最初は何も構えずに作るけど、二回目は一回目と同じように作ろうとすると妙にうまくいかない。それで三度目にようやく作り方が定着するような感じです。
(ものを見せながら)先日、鉄瓶の箸置きで出来に納得できずにはじいたものがこれです。鉄瓶模様の点々(くぼみ)を深く入れすぎちゃったために、釉薬が入らなかったところがあります。

─────えー、この程度ではじいちゃうんですか? 
私が思っていた以上に永田さんの目は厳しい!

ネット販売では、お客様は実際にものを見て選べるわけではないので、自分の中でハードルが上がっちゃうんですよね。

永田さんの製作ノート。サイズや粘土の重さが記録されています

箸置きの型紙や道具。れんこんの穴あけや鉄瓶のあられ模様など、小さくとも手間ひまかかっています。


お客様の手元に行くまでには白石さんというフィルターもある。それが通るか通らないか。
それに、ネットでは対面じゃないのでお客様の感想がわからないですから。
送った後にまた注文してもらえたら「満足してもらえたんだな」とわかるけれども、良かったのか悪かったのかわからない場合も多いので、自分が納得していないものを送り出すと後々心残りがありそうで。
常に「ベストのものを送らないと」という意識があります。

─────常に納得のいくものを出していこうという永田さんの姿勢は、売り手である私やお客様にとっては信頼感につながります。

たぶん自分は人にほめてもらいたいんだと思います。小さい頃から母に「上手だね」「すごいね」とほめてもらって育ちました。
今、子育てをしていて、母が自分にどれだけ愛情を注いでくれていたかがわかります。
ほめてくれる人が身近にいなくなって(お母様は数年前に他界)、今はお客様に喜んでいただきたい。
期待してくれる分、自分はがんばれる気がするんです。絞りだせば絞り出すほどアイデアが閃くというか、常にアンテナを張ってることが大事。
なので、これからもお客様が望んでいる“以上”のものを作っていきたいですね。時間がかかっても、手を抜かずにコツコツといいものを作っていきたい。お客様に喜んでもらうことが原動力です。
(2013年6月19日 聞き手:白石由美子)